看取りの看護の難しさ

先日の夜勤で私が受け持っていた悪性リンパ腫のAさん78歳女性の容態が急変した。

本人・家族ともに末期がんであり、もう長くないとドクターから告知されていた。
人生の最後(ターミナル期)を過ごすための入院であった。

Aさんのがんは、口腔内で発症し、左右の頬っぺたが日に日に腫脹した。

徐々に口は開かなくなり、食べることも難しく、少しの刺激で容易に出血を起こした。
出血した血液が咽頭に流れ込み、気道閉塞をおこせば、窒息死。

『食べたい』という本人の強い意志を尊重するため、吸引器を片手に食事を見守った。
「痛い、苦しい、でも食べたい、ああおいしい」Aさんはこの言葉を繰り返し言っていた。

40歳代の長女は何日も病院に泊り込んで看病していた。
この状況をどんな思いで、みていたのか?
「お母さん、もう食べないで」なのか「最後に食べたいだけ食べて」であったのか?

口からの出血は次第に増加し、口元に当てたガーゼは、みるみる真っ赤な血で染まっていった。
「お母さん、お母さんしっかりしてよ」という娘さんの声が今でも耳にハッキリと残っている。

                                          つづく